「飛ぶ教室」東大卒オンライン家庭教師のけんです。
今回は大学受験国語現代文の解き方、【本文読解】と【設問解答】それぞれのテクニックについて解説しようと思います。
日々生徒に指導する中で、誤答の原因を沢山みてきた経験から言えることとしては、
【本文にいかに適切に書き込みができるか】と、
【設問をいかにメタ的(俯瞰的)に整理できるか】が、現代文入試では重要ということです。
それは記述でもマークでも共通ですが、それぞれの違いも含めて見ていきましょう。
現代文の本文読解方法【線引き・メモ・印】
なるべく線を引かないこと
普段のオンライン授業では、まずは解いてきた過去問を全て写真で送ってもらっています。
その際、現代文が苦手な人は、本文の書き込みを見るだけですぐに見分けられます。
そう。苦手な人の特徴その1は、文章中にびっしりと線を引いてしまっていることです。
線を沢山引いてしまう原因は、
- そもそも線を引かないと文章が頭に入らない
- 先生に引けと言われたがどこに引けばいいかは教わっていない
- 重要な箇所を見抜く自分の基準がない
などがありますが、一番根本的な要因は3つ目の、「重要な箇所を見抜く自分の基準がない」ことにつきます。
このタイプの方は、逆に「ここは線を引いてほしいな」というところをスルーしていて、それが設問での誤答に直結していることが多々あります。
具体例をみてみましょう。実際の現代文過去問の一部です。
写真を見て描いた絵画は、より仔細に対象を観察できるメリットがあるにせよ、間接的な経験であるため、A)絵画に寄せられる期待に応えていない、ということだったのかもしれません。
早稲田大学文化構想2017年度国語第2問 鈴木理策「見ることとうつすこと」
対してこういう問題が出題されました。
傍線部A「絵画に寄せられる期待」の意味として最も適切なものを選べ。
同設問(一部改変)
イ:画家と世界との直接の交流から生み出される感動
ロ:画家が絵具を介して創造する「今」が与える感動
ハ:写真を見ずに描かれた絵画のもたらす本物の感動
二:絵画がもたらす写真よりもいっそう個性的な感動
この問題の正答は、イの「画家と世界との直接の交流から生み出される感動」です。
本文全体を読まなくとも、答えはイだとわかるかもしれません。
なぜなら、傍線部Aの直前には、「(写真を見て描いた絵は)間接的な経験であるため」期待に応えられないと、はっきりと書いているからです。
これを裏返せば、直接的な経験があることが絵画への期待だということになり、「直接」と書いてある選択肢イが正解しかあり得ません。
ところが、この問題に取り組んだ生徒は、直前にある部分に線を引かず、そのことが誤答に直結してしまっていたわけですね。
教訓としては、「線を適切な箇所にだけ引く」。と言ってしまえば簡単ですが、実際やるのは難しいですよね。
そこで、まずは本文の中でも傍線部や空欄の前後だけに線を引くことを心がけましょう。
詳しくは、傍線部の前後の中でも、傍線部の「理由」にあたる箇所と、傍線部の「言い換え」にあたる箇所だけでOKです。
「のため」「だから」、「つまり」「例えば」などがあれば明快ですが、良質な文章ほど関係があえて書かれていないことが多いので注意してくださいね。
「他にも線を引くべき箇所があるのでは」と思った方、その通りです。
ですが、今回の目的は「線の量を減らすこと」です。線が多いだけでは、線同士の重要度が分かりづらく、読み返す時に使い物になりません。
なので、次の節で線引きのルールを一つ紹介します。このルールを守れば、線引きがシンプルになるはずです。
本文にメモを書き込むこと
現代文が苦手ということは、「言語化能力が乏しい」とも言い換えられます。
つまり頭ではぼんやり分かっていても、それを言葉に移す習慣がまだついていないということです。
そういう方(実は高校生の大半)は、本文に線は引くものの、「言葉」のメモを問題紙に残さないというケースが多いです。
特にマーク形式の受験では、自分の名前以外一切書くことなく試験を終えるという事態も少なくないのですが、
「読み」と「書き」は切り離せない能力なので、書く能力を退化させている人は非常に危険です。
書く能力をつけるために、当教室では要約課題をマークしか使わない人にも行ってもらっています。すごく効果があるので試してみてくださいね。
段落の役割をメモすること
さて、本文にメモと言っても何を書けばいいのか分からないという方は、まずは段落ごとに上の余白に一言書くことを心がけましょう。
その内容は、段落の役割についてです。評論文ならば、【問題提起】【反論】【再反論】【具体例】【結論】などです。
面倒な方は自分にだけわかるよう省略してもかまいません。
とにかく段落の位置付けを全体の中で理解することが現代文上達の最重要項目です。
線引きは段落ごとに1つまで
段落ごとの位置付けさえわかれば、あとは段落の中で重要な部分を探すだけです。
受験に出題される優れた文章は、段落ごとに一番重要な文が原則1つだけあります。
例えば、【問題提起】の段落には、「〇〇なのはなぜか。」など、疑問文の箇所が最重要です。
先ほどの傍線部前後に加えて、段落ごとに重要な一文だけに線を引くことで、線引きの数がかなり抑えられます。
「対比」をメモすること
現代文では「対比」が重要だと、耳にタコができるほど受験生は聞かされています。なので「対比」されている箇所にマークしている人は多いでしょう。
ところが、「対比」される単語のペアはどんどん言い換えられますし、難関大の問題になると、そもそも「対比」されるペアが前半と後半で全く違ったり、3つの概念が対比されたり、対比が複雑化していきます。
その結果、どのペアが大事だったのか忘れてしまうことがよくあるため、重要な単語は四角で囲んでおき、言い換えられた後の単語には元の単語をメモしておくのが良いでしょう。
「自分の気持ち」をメモすること
現代文を退屈に感じる多くの受験生は感情を殺して文章を読んでいます。
しかし現代文の著者は、通常の感情の働きがある読者に向けて文章を書いています。
なので、受験生は著者の願いになるべく反応し、怒るべきところで怒ったり、知的に面白いところを見つけたりすることが、現代文の上達に意外と重要な要素です。
とりわけ、「疑問」を自分のものにすることが大切です。
個別指導の経験上、文章の流れが掴めていない原因は、「著者の問い」を自分も一緒に考えていないことにある人が大半です。
授業の際、「この文章の著者の疑問は何でしたか?」と尋ねて、正しく応えられる生徒はほとんどいません。大概、冒頭に分かりやすく書かれているのにもかかわらず、です。
なので生徒にはまず、「自分にとって分からなかった箇所には全部「ハテナ」マークを書くこと」を実践してもらっています。
そういう疑問を著者は必ず想定しているので、文章の後になってそれが解決することが大半です。
「理想の読者」になるには、まずは疑問点をメモしていきましょう。
本文に印をつける方法
接続詞に印をつけないこと
本文読解の解き方について、最後は印のつけ方を考えます。
先生に言われたから、という理由だけで接続詞に印をつけている人は多いですが、あまり意味はありません。
第一に、良い文章は接続詞が省略されていることが多いので、むしろ省略を補うメモのほうが意味があります。
第二に、接続詞は前の段落と次の段落の関係を示しているに過ぎないからです。
逆に、文章全体の位置付けは接続詞では理解できません。
私たちはすでに、段落の位置付けを上の余白にメモしています。これで十分です。
接続詞に囚われてしまうと、逆に全体の位置付けを忘れてしまう、という人が非常に多いので、最低限にとどめてください。
固有名詞など具体的なことを印づけしよう
これまで見たように、全体の流れはメモ・線引きで把握できます。
その上で、あえて印づけが必要なのは、細かくてややこしい、つまり忘れやすい箇所です。
実際、読み終えてから設問で、本文と合致する選択肢を選ぶ問題が出たときに、細かいことを忘れてしまっていることはありませんか?
そんな失敗をしないために、人の名前などの固有名詞、年号、専門用語にはどんどん印をつけましょう。
〇、△、□など、バラエティがあった方が覚えやすいです。
自分の短期記憶力を過信しないことが、現代文読解の鉄則です。
本文のジャンルによって着眼点を変えよう
ここまで線引き・メモ・印のやり方について解説してきました。
主に評論文の解き方を意識して書いてみましたが、文章がエッセイのときは線を引くべき箇所は少し変わってくるので注意してくださいね。
評論文は、抽象的な主張の把握が読解において重要な一方、エッセイは具体的な物事の考察が主眼になることが多いです。詳細は以下の記事でも解説しています。
誤解されがちな評論と随筆(エッセイ)の違いをプロオンライン家庭教師が解説。大学受験国語現代文の理解に欠かせません!
なので、エッセイの場合は具体的な考察対象の特徴を捉えるために、本文の書き込みを行っていきましょう。
小説の場合は、重要な点は千差万別なので難しいですが、
- 名前に印をつける
- 直接書かれていないが暗示されていることをメモする
- 出来事・心境が変化する記述に線を引く
など、臨機応変に書き込みができるように工夫できるとよいですね。
現代文・マーク形式の設問解答方法【選択肢・空欄補充・抜き出し・並べ替え】
さて、いよいよ設問を解く方法を考えていきましょう。より点数に直結するテクニックなので、是非お読みください。
選択肢はメタ的(俯瞰的)に考える
たとえば数学では、問題を解く側に公式の知識が必要となりますが、国語のマーク問題には、問題を作る側に問題作成の公式があります。
出題者の側に立って考えてみましょう。
「傍線部の言い換えとして正しい選択肢を選べ」というタイプの問題であれば、正解の選択肢を作成するのはとても簡単です。頭を使うのは当然、間違いの選択肢を作るときですよね。
ところが間違え方のパターンは有限です。今思いつくものをなるべく列挙してみてください。
- 本文と全く無関係な記述をする
- 本文の主張と逆の主張をする
- 本文の別の箇所の説明をする
- 対比されている2つの単語の説明を入れ替える
- 極端すぎる主張に変える
応用してもっと難しくすることもできます。
- 本文とは無関係だが、常識的には正しい主張をする
- 本文の単語を沢山並べて無関係なことを言う
- 「AだからB」を「BだからA」と論理関係を逆にする
- 「近代とは、近代的な時代である」など、論理的におかしい無意味な説明をする(トートロジーと言います)
他にも色々あると思いますが、こういった間違いのパターンは現代文で唯一と言える公式です。
なんとなくで選ばずに、選択肢を根拠を持って選ぶために、選択肢をメタ的に見ることができれば、他の受験生と優位に差をつけることができます。
また、多くの受験生は、「本文とそれぞれの選択肢の比較」しかしていません。
しかし、それではせっかくのヒントを使えないのでもったいないです。
選択肢の問題では、選択肢同士の比較をすることが秘訣です。
「選択肢イは本文のこの部分に着目した説明で、選択肢ロは別の部分に着目した説明。より重要なのはイだな・・・」など、頭の中でもメモでもよいので、選択肢同士を比較したときに見えてくる特徴の違いを考えましょう。
空欄補充(穴埋め)問題は抽象的な文が狙われる
穴埋め問題は本文の一部を隠すだけなので簡単に作れますが、解くのは意外と面倒ですね。
選択肢同士の比較は必須ですが、それ以外には、出題頻度の多いパターンを押さえておくのが大事です。
空欄が作られやすい箇所は、抽象的にまとめられた文です。つまり、その文だけでは簡潔すぎるため、直前と直後にその詳しい説明が書かれている文が狙われがちです。
直前と直後の言い換えを丹念に読み解いて、空欄の候補を絞りましょう。
抜き出し問題は「近接性」「検索」が大事
「傍線部や空欄を10文字で言い換えている箇所を抜き出せ」というような問題は、「絶対にコレ!」という正解が選びづらい問題も多く面倒です。
そのため問題作成者は、文字数を制限したり、なるべく正解を一つにする工夫をします。
正解が選びづらい理由は、多くの文章では何度も同じことを言い換えて読者の理解を深めようとされているからなんですよね。
そのため、空欄の単語を含んだ文と、ほとんど同じことを言っている箇所が前後にあるような文章が空欄問題では選ばれやすいです。
言い換えになっている文がたくさんある場合は、なるべく近い箇所から目星をつけて探しましょう。
抜き出しに時間がかかる人は、本文全体を見直してしまっていることが多いです。
全く同じ単語が前後にある場合も多く、その場合は「検索」が有効です。実例をみましょう。
高麗の雑器は、□□の最も深い次元で発見し直された。
という文の空欄を埋める問題では、言い換えになりそうな候補がいくつかあったのですが、
雑器という物が在ることの言わば最も深い次元が、…(後略)
という記述が2段落前にあり、「在ること」が抜き出しの答えになっていました。
つまり、空欄の直後にある「最も深い次元」の部分がそのまま出てきている箇所が正解に選ばれているんですね。
このように、「近接性」で候補を絞ることと、前後と同じ単語がないか「検索」することが抜き出しの王道です。
並べ替えはペアを見つけよう
文章の一部や段落がまるごと空欄になっていて、選択肢の3〜5程度の文を並べ替えて意味のある文章を作る問題もたまにでます。
その並べ方は、4つの選択肢の場合は4!=24通りもあるので、全部試すのは困難です。
ところが、選択肢のペアが1つ見つかれば、そのペアと残り2つの文を並べるだけなので、3!=6通りにまで候補が減らせます。
まずは選択肢同士のペアを見つけ、空欄の前後も見ながら文脈を捉えていきましょう。
以上で、マーク形式の解答のテクニックは終了です。次は主に国公立志望者向けに、記述のコツを解説していきます。
現代文・記述形式の設問解答方法
要素を含めることにこだわりすぎない
「記述問題の採点には客観的な基準があり、要素がいくつ含まれているかが重要」という説がよく参考書なんかに載っていますが、眉唾ものですね。
要素で加点・減点するのは、大量の答案を処理しなければならない全国模試の採点者のためです。その採点者とは、学生アルバイトが大半です。
一方で、実際国立大で入試現代文の採点をしているのは、教授本人であることも多いです。
作成者に直接聞いたこともありますが、基本的にそういった厳密な(絶対的な)採点基準は用意していないという大学もあります。
大学教授は普段から学生のレポートに成績をつけていますが、その際の評価は「相対評価」です。つまり、一番気に入った答案を満点にして、それを基準に他の答案の点数を下げるなどの方法ですね。
想定していなかった優れた解答があった場合は、それが最高点になることもあります。
確かに記述解答に要素を盛り込むのは必要条件ですが、相対評価を行う採点者の心象を悪くしないためには、自分軸で本文を理解して表現すること、きれいな日本語であることといった十分条件も重要です。
まずは構文を作る
記述になれていない場合、要素を無理に詰め込もうとすると、文章が支離滅裂になりがちです。
特に東大タイプの、解答欄が小さい問題では注意が必要です。
例えば「対比」を説明することが求められる問題では、まず初めに「Aは〜であるが、Bは〜である」といったように、解答全体の構造をしっかりと決めてから、要素を詰め込んでいくと、文の破綻が避けられます。
「どういうことか」は言い換えを意味する
「傍線部に〜とあるが、どういうことか」という設問が記述では頻出ですね。
例えば、
「その<忘却>にも、意味がある」とはどういうことか説明せよ。
これが傍線部の言い換えを求められていることは明らかですが、意外と記述作成の際に、言い換えになっていない解答を作ってしまう受験生が多いんです。
ここでの言い換えとはつまり、厳密に傍線部と同じ構文で、同じ要素を含んだ文章でないといけないということです。
上の文ならば、「その」の指示対象、「<忘却>」の意味、「にも」の「も」ということは他の並列されている事項は何か、「意味がある」とは誰にとってどのような意味があるのか、など。
細かく品詞分解を行い、それぞれのパーツを5W1Hを補って説明する必要があるということです。そうでない文は言い換えとは言えないんです。
これは意識しないと絶対にできません。
採点者は本文を読んでいないと思おう
ありがちな解答では、記述した内容が、本文を読んでいない人にはわからないようになってしまっています。
例えば、本文で出てきた専門用語や著者の造語を、何の説明もなく解答に含めるといったミスです。
出題者は本文を読んでいますが、採点者は本文を読んでいないという前提で書きましょう。
記述で字数が余って書くことがないという人はこれができていないです。
何も知らない人に説明する態度で書けば、書ききれないほど書くことがあることがわかります。
記述解答が本文全体の要約になっている
しごく当たり前と思われるかもしれませんが、原則として本文の傍線は、本文全体の読解において決定的な役割を果たしている文に引かれています。
問題を作るのが下手な出題者の場合はどうでもいい部分に設問を作ったりするのですが、競争の激しい難関大の問題は特に、傍線部の理解が読解のカギとなるよう作られています。
なので前半でも紹介したように、傍線部の前後に線を引くことはそれなりに合理的です。
そして東大・京大などの記述しかない入試問題では、傍線部を説明する記述答案を作って、それを並べて読めば、その解答自体が本文全体の要約になっているように問題が設計されていることが多いです。
本文を読んでいない採点者が、解答だけ読めば本文を読んだつもりになれるように、記述を作ることが理想です。
まとめ
という訳で今回は、現代文の本文読解と設問解答のテクニックをかなり詳しく解説しました。この内容を繰り返し読んで実戦すれば、自ずと現代文の成績が上がっていくと思います。
以下の記事で古文の解き方も解説していますので、あわせてお読みください!
とはいえ、独りで実戦するだけでは、自分のできない原因を客観的に知ることは難しいです。また、ここで説明しきれない細かいテクニックもたくさんあります。
着実に現代文の成績を上げたい方は、ぜひオンライン家庭教師「飛ぶ教室」に私の指導を受けに来てください。無料体験も行っております。
ではでは。
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