【漢文とは?】白文重視の漢文の読み方&解き方を東大卒オンライン家庭教師が解説!【大学受験国語古典のコツ】

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「飛ぶ教室」オンライン家庭教師のけんです。
普段から難関大受験生にオンライン個別授業で国語・英語を教えています。
今回は大学受験国語で最も後回しになりやすい漢文の読み方を解説していきます

漢文ができない人は、【句法・書き下しの暗記】にばかり気を取られて、【漢文の構造】を気にしていないことが多いので、今回の記事を読んで、前半で構造的な理解を深めていきましょう。

後半では、【背景知識=ステレオタイプをどう活用するか】についてもじっくり解説しております。他の受験生に差をつけるコツを是非ゲットしてください!

大学入試国語・漢文の構造的な読み方【古文・英語と比較】

日本の古文と漢文の比較

漢文の構造を考えるときには、日本語・英語との比較が重要です。

古文については以下の記事で解説していますが、【主語がない】というのが最大の特徴です。

古文では、【主語が省略】されるというよりも、【主語は必要なときだけ補足】されるという説明が適切です。例文を見ましょう。

人かずとも思はぬに心ざし深き人ぞ、添ひて言いける。文おこすれど、返りごともせねば……(後略)

『伊勢集』の一部

この文章には主語がほとんど出てきませんね。主語や目的語などを補足して現代語訳するとこうなります。

女は)恋愛対象の数に入れているとも思っていないのだけど女のことを深く愛する(男の)人が、(女から)心を離さず好意を伝えた。男は恋文を寄こすけど、女は返事もしないので……(後略)

『伊勢州』一部の現代語訳

このように、ひとつづきの文章の中で、当然のように主語が切り替わっていくのが古文の特徴です。これが掴めるかが古文読解の出来を左右します。

一方で漢文はというと、主語が切り替わるときはしっかりと主語を書くのが原則です。省略されることもありますが、その場合は前の文に出てきた主語が引き続き主語になっています

これも例文を見てみましょう。(早稲田文化構想17年度国語)

晋扶風楊道和、夏於田中、値雨。至桑樹下、霹靂下撃之

晋の扶風の楊道和、夏に田中に於(お)いて、雨に値(あ)ふ。桑樹の下に至るに、霹靂下撃之

干宝『捜神記』巻十二

一文目の主語は楊道和なのは明らかですね。
この文では、動詞は「値ふ」(=遭遇する)だけで、「晋国の扶風郡で、楊道和が田んぼの中で雨に遭遇した。」と訳せます。
「夏於田中」の部分は、「於いて」が動詞ではなく前置詞なので、全体としては副詞句の役割を果たしています。

問題は2文目です。「至桑樹下」の「至る」は動詞なのですが、主語は省略されています。
ということは、先程確認した通り、前の文の「楊道和」が主語だということになるので、

「(楊道和が)桑樹の下に着いたときに」と前半は現代語訳できますね。

そして2文目の後半を、白文から書き下しできるかが早稲田過去問で問われていました。
実際の設問を一部改変して引用します。

霹靂下撃之」の書き下し文を次から選べ。
イ:霹靂の下之を撃つ
ロ:霹靂之を撃つを下す
ハ:霹靂下りて之を撃つ

この3つの選択肢を比較してみると、選択肢イは「霹靂の下」が副詞句なので、主語が無い文章になりますよね。主語が無いということは、漢文では前に登場した主語を引き継ぐ決まりなので、「楊道和」が主語ということになります。


よって文の前半を含めると、
楊道和が霹靂(カミナリ)の下で桑の樹を攻撃した」
という意味になってしまいますが、雷が落ちてくる中でくわの樹を急に攻撃する人は明らかにヘンですよね。

つまり消去法で、ロかハの選択肢、つまり、「霹靂」が主語に切り替わらないと意味が通らないということになります。

どちらが正解かは次の章で解説します。
繰り返しますが、ここで重要なのは、

【漢文では、動詞の主語は必ず直前に登場した主語であり、動詞の主語が入れ替わるときは主語を明記する】というルールがあるのです。
逆に【主語が省略された動詞は、直前の主語を引き継ぐ】

無断でころころと主語が変わってしまう、古文とは全く違うんですね。

英語と漢文の比較

次に、英語と漢文の比較をしてみましょう。お気づきの方もいると思いますが、漢文は古文よりも英語に近いです。

その理由は、漢文の構文がSV、S(V)CあるいはSVOであることが原則だからですね。
(Sは主語、Vは動詞、Oは目的語、Cは補語)
一方英語はご存知の通り、5文型といって、SV、SVC、SVO、SVOO、SVOCの5つがあります。

厳密には色々違い、細かくは触れないのですが、古文や現代日本語がSOVの語順であるのに対し、漢文・英語はSVOの語順なのが最大の差異です。

逆に英語と漢文の違いは、英語では主語は絶対に省略されないのに対し、漢文では主語は省略されうるという点ですね。

細かい比較をしても仕方ないのですが、実践的に意識してほしいのは、
英語の構文解釈と同じように、漢文を読むときには語句にS、V、O、C、()←副詞のまとまりを囲む などの、記号を書き込んでみていただきたいのです。

これが出来れば、いつの間にか漢文を白文で読めるようになります

漢文では、返り点や書き下し文があることでむしろ中国語の構造が理解しづらくなってしまいます
これらは日本の教育における歴史的な慣習なのですが、勝手に日本人が日本語の語順にして読むためだけに作ったに過ぎないので、実は人によって返り点や書き下し文は千差万別です。

これ、あまり意識してなかったのですが、大学の研究で漢文をそのまま読んだり、複数の書き下しを比較したらあまりにも適当なことに気づいたんですよね。。

ともあれ、入試の出題者はその日本人受験生の弱点を突いて白文を書き下させる問題を出してくるんです。卑怯ですよね……。

英文のように構造をメモし、把握してみる

話を戻して、先程の文でSVOの書き込みを実践してみましょう。1文目はこんな感じ。

2文目も同じく書き込みます。

こうすると構造が明快になって、白文でも読めませんか?

さて、先程やり残した問題がありました。

霹靂下撃之」の書き下し文を次から選べ。
イ:霹靂の下之を撃つ
ロ:霹靂之を撃つを下す
ハ:霹靂下りて之を撃つ

選択肢の候補はロかハでしたが、上の構造のメモを参考にすると、正解はハ。

選択肢ロは、「之を撃つを下す」の部分が、「之を撃つ」をひとまとめに目的語にしてしまってます。
ところが目的語は之(桑樹)で、「撃つ」は動詞なので、ハのように、「下りて之を撃つ」と2つ動詞が登場してほしいわけです。つまり現代語訳は「雷が落ちてきてこの桑樹を直撃した」。

全部の文にSVOを書く必要は無いですが、白文の周りだけでも意識してメモすれば、正答率が上がること請け合いです。

書き下し文を作ったり、返り点をふったりする問題でも、まずは中国語のまま構造を把握してから、日本語にするならどうしっくりくるかを考えるのが正解です。

例えば受験で丸暗記する「未」「将」「須」といった「再読文字」も、多くは英語でいう助動詞のようなものです。
そう理解した上で、日本語に直すなら「いまだ〜せず」がしっくりくる。と、知識は多面的に深めるとおぼえやすいですね。

もちろん漢文には独自の品詞分類がありますが、受験レベルならば英語になぞらえて理解する程度で十分です。

 漢文読解に必要な知識【漢字・句法と思想的背景】

漢字を覚えるための工夫

これまでで大まかな漢文の構造を説明しましたが、一つ大きな問題があります。
それは、【漢字が動詞なのか名詞なのか、はたまた副詞なのかわからない問題】です。

日本語と共通の漢字なら、ある程度まで感覚で見分けがつくこともありますが、同じ一つの漢字でも、動詞や名詞など複数の役割で使われることがあります。

また、主語と目的語の位置にくる名詞は判断しやすいですが、動詞と前置詞はどちらも目的語の前にくるため、どちらなのかは文脈でしか判断できないこともあります。

なので、漢文の勉強では「返り点・書き下し・句法」の勉強に加えて、「それぞれの漢字の分類・意味」の学習を行ってください。

頻出な語彙の知識については、ド定番ですが東進の『漢文ヤマのヤマ』という参考書で対策するのがおすすめ。

あとで述べるようにデメリットもある本ですが、こちらの内容を押さえたら、共通テストや志望校過去問に取り組めるレベルになるので、どんどん実践で沢山の漢字を知っていくこと。地道ですが王道ですね。

次はもっと実践的な解き方に関わる【背景知識】について考えましょう。

まずは【背景知識=ステレオタイプ】を持ってよむべし

「ステレオタイプ(偏見)は良くない」というのもまた一つの偏見です。
漢文に限らないですが、文章を読むときにはある種のステレオタイプを持って読むと、スムーズに読解できることが多々あります。

現代文では、ステレオタイプを覆す著者の逆説を理解するのが大切ですが、これも先にステレオタイプを持っていないと、理想の読者にはなれないですよね。

一方漢文では、ステレオタイプ的な考え方がそのまま登場する寓話や議論が出題されることも結構多いです。その筆頭が「儒教道徳」です。

粗っぽくいえば「親や目上の人には従いなさい」「思いやりを持って行動しなさい」など、現代日本にまで通じる価値観を形成したのが「儒教道徳」で、こういった主張に説得力をもたせるために、教訓を含んだ寓話・説話が昔たくさん生産されました。

「寓話」は「物語」と違って、何かの教訓を伝えるためのストーリーです。
一方「物語」は単なる出来ごとのつながりで、そこに深い意味は無いのが通常。
漢文では「寓話」の出題が圧倒的。

なので何らかの教訓がゴールにあると思って、常に読んでいくことが重要です。

儒教ステレオタイプに反する「孔子」

「孔子の言葉を留めた『論語』が儒教の原点」ということは誰でも知っています。
しかし、ここで注意して欲しいのは、「孔子の教え」と「儒教道徳」はイコールではないということです。

一般に、どんな教えでも時代を経るごとにその思想が間違って伝わります。色んな思想家がもとの思想を歪曲して都合よく解釈するからですね。

そして誤解が多い教えの代表格が「孔子の教え」です。
実際『論語』を読むと、「臣下であっても間違っている君子にはきちんと意見をすること」など、「儒教道徳」とは反する主張がたくさんあります。

などなど、学校や参考書では教われない「思想史」は奥が深いです。例えば先程紹介した『ヤマのヤマ』では、

儒家…孔子を祖とし、曽子・孟子・荀子らに続く。前漢の武帝以降は国境の扱いを受け、長く中国思想の正統として尊重されてきた。

『漢文ヤマのヤマ』

などと、正しいけれど何の説明にもならない説明しか載っていないです。
世界史テストには役立ちますが、「思想の内容」や「孔子と儒教の違い」などには触れず、漢文の読解には何の意味も為さない説明です。

漢文の勉強では「句法」など文法的なことに気を取られがちですが、文章を読む際にその主張にも必ず意識を向けていくべきです。

著者や題名が本文の前後に必ず載っているので、まずは確認して話のゴールを予想するために活用しましょう。

儒教ステレオタイプに反する「老荘思想」

次に、「儒教道徳に対するアンチテーゼ」として起こった「老荘思想」に関する文章の出題が、儒教と並んで大学受験では多いので、内実を掴んでおきましょう。『ヤマのヤマ』では、

道家…老子を祖とし、莊子・列子らに続く。儒家の説く道徳や礼儀を人為として否定し、無為自然の道を説く。

『漢文ヤマのヤマ』

と、分かるようで分からない説明がありますが…間違っていますね。

老荘思想における「人為」というのは、「道徳や礼儀」のことではなく、「人が何かを意図を持って、つまり恣意的に行うことそれ自体」のこと。私達ふくめ、ものすごく当たり前だと思っていること自体を根本的に否定するのが道家なのです。

「何かを無理にやろうとすると、必ずうまくいかない」為すがままを理想とするので、国を治める君子であっても、基本的には何も指示を出さない方が上手くいく、という攻めた考え方ですね。

この「無為自然」的な思想が込められた寓話は無数にありますが、例えば宋代の邵伯温『邵氏聞見録』では、船が転覆して周りの人々が騒いでいても、ただ一人じっと座り続け、困難を逃れた人物が登場します。

使用サービスリスト
  • Gmail
  • Google Chat(普段の連絡・資料共有)
  • Google Meet(ビデオ通話)
  • Google Jamboard(オンラインホワイトボード)
  • Google Sheets(授業報告の共有)
  • Googleカレンダー(授業時刻のリマインド)

Gmailアカウントを作成すれば、全てグーグルの公式サービスでなんの問題もなく完結します。

深く考えないこと、つまり無心があれば船が転覆しても助かる、というある種極端な考えは、「タイタニック号」の乗客に言うと怒られると思いますが、とにかくこれが「無為自然」の好例です。

一口に儒教といっても、朱子学や陽明学など多様な考え方があり、また上のような老荘思想があったり、複雑で細かい違いはあるのですが、
「無為自然」といった独特の思想は現代人にとっては理解しがたいので、受験ではよく問われるのです

こうした内容に含まれた主張を読み解くのが漢文では重要です!

まとめ

いかがだったでしょうか。

漢文は直前期に対策を後回しするケースが多いですが、【白文の英文法に近い構造の理解】【背景知識を持って主張を見抜く読解】ができれば、短期間でも成績を伸ばしていくことができると思います。

役に立ったと思ってくださったら、現代文古文の読み方もあわせてご覧ください!

概念的な理解だけでなく、問題集・過去問の実践が重要なので、詳しく一緒に学びたい方は、当教室のオンライン授業をおすすめします。無料体験も実施中

ではでは。

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