東大卒プロのオンライン個別指導「飛ぶ教室」講師のけんです。
普段全国の大学受験生に向けて国語を教えていると、文系難関大の受験生であっても、中堅大志望でも、現代文が一番苦手な人が多いように感じます。
現代文が「できない」のには、読書経験がすくないことや、漢字・語彙が少ない、感覚で問題を解いているなどさまざまな要因があるのですが、一番明快な基準は「比喩」を用いる「たとえ力」の有無なのではないか、ということが指導分析を通して見えてきました。
今回はその「たとえ力」とその付け方について考察してみます。
目次
現代文は「比喩」のゲーム
賢い人は「比喩」が得意
私もしがない東大生でしたので、いわゆる「賢い人」に沢山出逢ってきました。
もちろん真面目一辺倒で、勉強ばかりしてきた人は話しがつまらないこともあるのですが、一方で「本当にこの人、賢いなあ」と思うのは、話していると会話が楽しいと感じる人です。
もっと言えば単に「お笑い芸人のように面白いキャラ」というよりも、「知的で独特な見方ができる人」のタイプですね。
こういうタイプの人は、やはりそれなりの読書経験を重ねているものです。
読書といっても色々ありますが、いわゆる純文学や人文科学の読書経験が豊富なことが、インタレスティングな話ができるかに深く関わっているように感じます。
特に文学というのは、ありふれたテーマをどれだけ新しく美しい言葉で表現するかに命をかけた芸術です。
その表現とは、まさしく「比喩」つまり、もともと無関係の2つの物に、共通点を見出して結びつける表現が根幹です。
単に「りんごのようなほっぺ」のように、ものを他のものに例えるだけではなく、「何の罪も犯していないのに逮捕された話(キリスト教の原罪を背負って生まれてくる人間の暗示?)」など、物語全体がなんらかの実際の出来事の比喩=寓話になっていることもあります。
余談、文学に興味を持つためにおすすめの漫画です↓色んな表現の勉強にもなるし、面白いですよ。
文学を読んで考えたりして、普段から様々なことを、意外だったり説得力があったり分かりやすくするために例えていると、話が面白くなるのも納得ですよね。
現代文は「たとえ」のオンパレード
小説に限らず、大学受験の現代文には「例え」が沢山でてきます。
「比喩」には実はたくさん種類があって、一筋縄には行かないのですが、
文学で中心になる比喩は「隠喩」といって、「王」を「ライオン」と言うように、「ヒエラルキーの頂点」というような「共通項」で無関係のものを結びつけることでした。
評論文やエッセイではこれと少し違って、「提喩」つまり「上位概念を下位概念(または逆)で表すこと」の表現が重要です。いきなり難しくなりましたが、諦めないでもう少しついてきてくださいね。
提喩の例としては、「お茶しませんか?」という表現です。こう言われて、本当に緑茶などの「お茶」を飲むのに誘われているとは思いませんよね。
「お茶」(下位概念)はもっと広く「飲み物」(上位概念)を意味しているだけです。
逆に「お花見に行こう」と言われて「ああ、パンジーを見に行くのか」とは思いませんよね。
こっちは「花」(上位概念)という言葉で「桜」(下位概念)を指しているわけです。
こういった抽象的なことを具体的な表現で示したり、具体的な表現を抽象的な表現で示す表現を「提喩」といいます。
現代文の評論文やエッセイは、この提喩の連続ですよね。例えば、「近代」という(抽象的な)時代を考察するために、(具体的な)ナチス・ドイツを例にとって考察する。
逆に、「二葉亭四迷の翻訳」という具体的な事例を扱うことで、「近代文学者の翻訳」という抽象的なことについて考える。などなど。
現代文を得意にするためには、この「提喩」をマスターすることが不可欠なのです。
現代文ができない人の原因と具体的な改善策
現代文ができないのは「たとえ力」不足
現代文が苦手でできない、読書経験が少なめの方は、これまでみたような「たとえ」を考える習慣が出来ていないのが根本的原因でしょう。
私のオンライン授業では、文章が理解出来ているか確かめるときは必ず
「この箇所はどの主張の例?」とか、
「この主張は抽象的だけど、どういう例えが載ってた?」とか、
「本文に載っている例以外に、身近に思いつくわかりやすい例は?」と、質問をしています。
この種類の質問をされると、分かったつもりになっている生徒は、間違えるか答えにつまります。
「たとえ力」は、もちろん人生経験にある程度比例しますが、実は高校生以上であれば誰でも身につけていく土台はできています。
難解に思える文章でも、身近な例を用いればあっさりと理解できることは多いです。
難解な文章は読者に「たとえ力」を求めている
そもそも現代文「難解な文章」は何かというと、
- 抽象的なことに加え、具体例も適宜出しているが、知らない具体例である
- 抽象的なことを述べているのに具体的な例が乏しい
の2つに分けられます。入試ではもちろんこういった文章がどしどし出てきますね。
1つ目の方がまだ簡単です。例えばある文章で、「ファシズム政権がスポーツ・祝祭の熱狂を政治的に利用した」ということの具体例として、
「戦前のナチスドイツ・ムッソリーニのイタリアのオリンピック・ワールドカップ」が引き合いに出されていたとします。
そして読者に「戦前の歴史知識」が不十分なとき、全く諦めてしまうのはもったいないですよね。
そのとき「学校で、運動会を通してクラスで団結した」という経験を思い出せば、この話題がすごく身近なものに感じられるかもしれません。
2つ目の例。例えば「監視社会では強制ではなく自発的に権力に従うことが求められる」といった主張が、具体例もなく出てきても、まずは周囲を見回してください(試験中に本当に見回すのはNGですよ)。
試験を解いているその教室自体が、「監視社会」の例になっているかもしれません。
先生や試験官が必ずしもあなた自信をずっと見ているわけではなくとも、「見られているかもしれない」という意識があるので、姿勢を正して勉強に集中しているフリをする。
このときあなたは実は「偉い人の意図を汲んで、自分自身で自分の体をコントロールしている」のではないでしょうか。
あくまで一例でしたが、どんな記憶や体験でもヒントにして、現代文を理解することができるのがなんとなく分かりましたか?
同時に、こういった引き出しを増やしていくために、特に歴史の勉強なども役に立ちます。
難しい文章をわざわざ書く著者は、ただただ性格が悪いのではなく、読者が身近な例を引き出して思考を深めることを求めています。
なので、このような「比喩」を用いた理解は、まさに王道なんですね。
つまり良い読者とは、「自分の記憶をフル活用する読者」なんです。
現代文は一見、「書かれていることを読めば解ける」ように思えてしまうのですが、
実際には「記憶を引き出して理解する」高度な記憶の整理力が求められる科目だといえます。
まとめ
いかがだったでしょうか。現代文ができるようになるためには、日常経験や歴史など、色々な記憶をフルに活用して、自分でどんどん具体例を作り出していきましょう!
また、現代文の解き方は以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。
もちろん一番おすすめなのは、背景知識が豊富で、難しい文章も比喩でかみくだく実践を一緒に行える先生と一緒に学ぶことです。
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ではでは。
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