前提として、記述問題はテクニック以上に十分な本文読解ができていることが大切ですが、今回はあくまでその記述の書き方のコツに絞って解説します。前半では総論的な考え方、後半では具体的な方法を見ていきましょう。
目次
現代文記述は「採点者への忖度」ゲームだと考えるべし
現代文記述問題で陥りがちな危険思考
現代文の記述に関して、多くの受験生が持っている間違ったイメージが二つあります。
一つ目は、「要素を何個含めるかが大事」 という考え方です。
例えば、予備校の記述模試の国語解説を見てみると、大体どこでも記述問題の採点基準として、3から4つくらいの要素が含まれているかがチェックポイントになっています。
こうしたことから、何となく受験生は、ただ本文からいくつかの要素を抜き出せばOKだと考えてしまうのです。
しかしこれは、模試における大量の記述答案を効率よく採点するために設けられた加点方式にすぎません。
「意外と知られていないのですが」、模試の採点は大学生のアルバイトが分担して行なっています。バイト採点官が機械的に淡々と採点をするためには、どうしてもわかりやすい採点マニュアルが必要となるんですね。
ところが、本番の国公立入試の採点は学生バイトが行なっているのではなく、基本的にはある程度知的なことが想定される大学教員が行なっています。
もちろん、採点スピードと客観性を担保するために、ある程度の加点方式は取られているでしょうが、それに加えて本文の本質的な理解ができているかも重要になっているでしょう。
そうなると、単に本文にある要素をつぎはぎにしただけの作文は非常に危険です。答案全体で論理が通っていないものは、簡単に見抜かれてしまいます。
二つ目の間違ったイメージは、「現代文の記述は抽象的な作文をするもの」 という先入観です。
どこで教わったのか、私の生徒でも、最初は多くの場合、過度に抽象的な答案を作ってきます。
そういった答案に対して、私が「何をいっているかわからないね」とコメントすると、生徒は「いやー、僕もわかりませんw」と返したり。
これは私見ですが、そもそも、たかが高校生程度が抽象的に物事を考えるなんて、不可能なんじゃないでしょうか。
そもそも多くの高校生は、「抽象的=曖昧な感じ」程度にしか理解していないのではないでしょうか。漠然とした(日本の多くの校長や政治家のポエムのような)文章は抽象的な文章ではありません。
もちろん訓練次第では可能ですが、具体的な知識の裏付けがないまま、一度読んだ文章を抽象化するのは、大学院以上の能力だと私は考えています。
なのでまずは、具体的に本文に書かれていることを理解し、表現するところから始めるべきでしょう。その大事さは、次の観点とも関連してきます。
「採点者にいかに理解度をアピールできるか」が大事
結論から言えば、現代文記述において一番大事な視点は、
「採点官が本文を読んでいないと仮定して、自分の答案だけを読んで本文に書いてあることの概要が理解できるかどうか」 です。
考えてみれば当然のことだと思っていただけるかもしれないですね。
国語入試の記述問題現代文では、本文に引かれている傍線がなぜ、本文全体にまんべんなく引かれているのか考えてみてください。
それは、その傍線部をそれぞれ説明していけば、結果的に全体の文章の要点が説明できるように設計されているからなのです。
なので、答案を作成する際には、単に設問に答えるというよりも、本文の論点をしっかりと整理して、まとめて採点官に伝えてあげる工夫を行いましょう。
そのためには、抽象的な文章ではいけないこともわかるはずです。
例えば、
「多くの家庭で消費されるリンゴは、その鮮明な、体内をめぐる血を思い起こさせるような赤色こそが魅力である」
と本文にある場合、その要約としては、
「リンゴは、血のような赤色こそが魅力である」
などが考えられるでしょう。
しかし、「抽象作文」洗脳に毒された受験生は、以下のような答案を作ってしまうのです。
「果物は、体液のような色が魅力である」
確かに抽象度は高いですが、本文とは何の関係もない文章ですね。
記述答案作成では、本文と抽象度のレベルをなるべく揃えてあげることが大事です。また、理解度をアピールするためには、限られた文字数の中で、なるべく具体的な情報を盛り込んでいる方が、魅力的ですよね。
現代文記述答案作成の具体的なコツ
話題の範囲を明確にするべし
ここからは具体的な記述作成のコツを3つ。1つ目は、話題の範囲を明確にすることです。
先ほどの例でもお分かりでしょうが、「リンゴ」の話をしているときに、「果物」の話にすり替えるのはNGですね。
同様に、「リンゴ」の話なのに、「青森のリンゴの品種つがるは…」と書いてしまうのもいけません。
どんな議論でも、話題の範囲は広すぎても狭すぎてもいけません。記述問題では、まずはその範囲を理解した上で、それを「主語」の中に含めて書き始めるとうまくいきます。
なお、そもそも、「主語」「主題」が抜けている答案は論外です。
「〇〇では」「〇〇は」「〇〇について」など、話題を示す言葉から書いてみてください。
一文で書き切るべし
記述を書く際には、何も考えず、前から順番に書き始めるのではなく、まずは答案全体の構造を決めてください。
全体の構造はどうやって決めればいいのでしょうか?
「どういうことか」が聞かれている言い換え問題なら、傍線部の文と同じ構造にしましょう。
「なぜか」が聞かれている理由説明問題なら、「〇〇だから」で終わる構造にしましょう。
「対比」的な文章であれば、「〇〇ではなく、××ということ」のように、「ではなく」などの言葉で、前半と後半で対比されている事項を説明しましょう。
この三つだけ意識すれば、かなりの割合の問題をカバーできると思います。
そして基本的には、記述答案は一文で書き切ることを目指しましょう。 複数の文で書こうとすると、上の構造が乱れてしまうことが多いからですね。
言い換えでは、二種類ある説明方法を使い分けるべし
※ここからは少し難しい話なので、飛ばしても構いません。
何かの言葉を説明する際には、二つの説明の仕方があります。
言い換え問題では、本文に書かれていることを順に説明し直していく作業が必要になりますが、多くの受験生は、「リンゴ」を「赤い果物」とか、自分の感覚で何となく置き換えたりするだけで、それはなんの説明にもならないのです。だって、リンゴ以外にも赤い果物はたくさんあるので、イコールじゃないですよね。
本文の言葉を言い換えるためには、なるべくイコールで繋げるような説明を心がけましょう。
1つ目は、「内包」的な説明と言います。
例…「リンゴ」とは、「バラ科リンゴ属の落葉高木、またはその果実のこと」
という風に、「リンゴ」と呼べるものの条件を全て説明するやり方です。
2つ目は、「外延」的な説明です。
例…「リンゴ」とは、「王林やジョナゴールド、世界一、ゴールデンデリシャスなどの品種がある。」
というように、具体的な例を並べて理解を促すやり方ですね。こちらは、いくら具体例を挙げても挙げきれないので注意が必要です。
どちらがいい説明ということは無いですが、本質的な理解をしているアピールをしたい時には、本文の言葉を「内包」的に説明し、本文のまとめをしたい時には、本文の具体例を並べて「外延」的に説明するというように、使い分けていったり、両方使うのが良いでしょう。
文字数が少ない記述では、なるべく簡潔で本質的な説明をしたいので、内包的な説明が良い場合も多いです。その際には、その記述が必要十分に本文での用語を言い換えられているか、チェックしてください。
まとめ
いかがだったでしょうか。リンゴの話がたくさん出てきたので、食べたくなった方もいるかもしれません。リンゴのアフィリエイトブログではないので悪しからず。
今回解説したコツは、本当に基礎の基礎の内容でした。また、最初に述べたように、本文の読解力が一番大事ですから、あくまで上記を踏まえた上で、さらに深い読みとさらに細かいテクニックを身につけていくことが、特に東大や京大などの難関大学対策には重要です。
ではでは。
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