「飛ぶ教室」オンライン家庭教師のけんです。
今回は大学入試国語・古文の解き方を解説していきます。
古文の読解では、【主語】の発見が、問題では、【文脈】と【文法】の両面から問題を見ることが最大のコツになります。
当たり前だと分かっていても、意外とできていない人が多いので、実際の問題を扱いつつ見ていきましょう。
また、現代文の解き方も解説していますので、こちらもお読みください。
目次
大学受験古文の解き方 読解編
「主語」は「省略」ではなく「補足」
そもそも古文は、どういう文法構造をしているか考えたことはありますか?
高校生であれば、学校の国語の授業で品詞について学んだとは思いますが、実は学校の授業では根本的な解説が不十分なことが多いです。
その結果生じている誤解は色々あるのですが、その中でも最たるものは、「古文には主語がある」という誤解です。
多くの方は「古文には主語があるけど、省略されがち」だと思っていますが、この考え方をまず変えることが受験では一番重要です。
古文の文章を意識的に読めば明らかですが、文章に「主語」が出てくることはほとんどありません。
むしろ「主語」が出てくるのは例外で、それを「省略」だと言いくるめるのは不適切なんです。
「主語は必要なときに補足される」という表現の方が的を得ているんですよね。
これは実は現代の日本語でも同じくあてはまるのですが、古文ではその傾向がより強いと思ってください。
「主語は基本出てこない」のは、【「誰が」行動しているのかが文脈から明らかだ】と古文の著者が考えていたからです。
一方で、「主語」をいちいち書くことに慣れている現代人の生徒は、その文脈を追う能力が衰えていると思ってください。
その前提で、一文一文を読むときに毎度「誰が」喋っているのか、行動しているのかを考えることが古文読解の最大のコツです。
助動詞・敬語は動作主体を見つけるヒント
喋ったり行動したりする人を「動作主体」と呼び、時折それを特定する問題が出題されます。
そしてそういった問題がなくても、常に「主語=動作主体」を考えて読むべきと先程お伝えしました。
そのために役立つ大きなヒントが、古文では「助動詞」と「敬語」です。
どちらも現代日本語にもありますが、特に古典ではその種類が豊富なのは、古代人が「動作主体」を特定するために必要だったからなんですね。
「助動詞」と「敬語」がなかなか覚えられない受験生は多いと思いますが、「主語を見つけるヒント」という観点からこれらを見つめるとかなり覚えやすくなりますよ。具体例を見て考えてみましょう。
過去の助動詞「き」・「けり」
文法の教科書を見れば、助動詞の「き」は直接過去、「けり」は間接過去と説明されていると思います。
話し手がその場に居合わせた経験を語るときは「き」、人から伝え聞いた出来事については「けり」ですよね。
これも、動作主体を見つけるヒントとして捉えるとわかりやすいです。例文を見てみましょう。
「この男の家ゆかしくて、率て行けと言ひしかば、率て来たり」
更級日記 竹芝寺(Weblio古語辞典「き」の例文)
(この男の家が見たくて、連れて行けと言ったので、連れてきたのです。)
文中の「言ひしかば」の部分の「しか」は助動詞「き」の已然形ですね。
ここで「率いて行け」と誰が言ったのかは一切書かれていないわけですが、「き」が直接過去だということがヒントになっています。
登場しているのは「この男」と「話し手」だけですから、その場に居合わせて「この男の家を見たい=男の家を知らない」人物は「話し手」しかいません。
なので、「話し手」が自ら「率て行け」と言ったとわかります。
このように、「動作主体」の特定に、助動詞「き」が大きなヒントとなっているわけですね。
尊敬語・謙譲語も動作主体特定のヒント
尊敬語・謙譲語から、「話し手」や「敬意の対象」を特定する問題もよく出ます。
これも、「動作主体の特定」問題の一部だと言えますね。
四段活用の尊敬語「給ふ」が使われている場合は、「話し手から見て上の立場の人」の行動だとわかりますし、謙譲語「聞こゆ」が使われているときは、「上の立場の人に対して相対的に下の立場の人」が話していることがわかります。
この2つを組み合わせた「聞こえ給ふ」の場合は、「話し手以外に二人いて、話し手より上の立場の人が、さらに上の立場の人に話しかけている」という情報が含まれています。
二重敬語「させ給ふ」や絶対敬語「奏す」などがあれば、誰も言わずとも天皇・皇后・上皇などの当時の最大の権力者らの存在が分かってしまいますよね。
このように、「助動詞」・「敬語」や、それ以外のすべての情報を駆使して、動作主体を特定することが受験古文の最大のカギだと思ってください。
冒頭の説明文をしっかり読むこと
一例として、早稲田大学の古文過去問で、次のような説明文から始まる問題を見てみます。
次の文章は後深草院二条の『とはずがたり』の一節である。後深草院二条は危篤の父親の看病をしている。これを読んで、あとの問いに答えよ。
そして、本文はこのように始まります。
今日などは、心地も少しおこたるやうなれば、…(後略)
「今日は心地が少し回復している様子なので、」と言っていますが、「誰の」心地が回復しているのでしょうか。
当然説明文からして、「危篤の父親」しかいませんよね。
なんでも無いように思えますが、古文の文章では、最初の一文から主語が無いものが非常に多く、それを理解するカギがないので、説明文を出題者が作っているんです。
説明文は読まないと絶対に解けないようになっているので、もはや「ヒント」どころではないですね。必ず活用しましょう。
人物相関図を作ること
先程の問題は登場人物が2人と少ないのですが、古文の問題では登場人物が5人など多数のものも多いです。
それに加えて主語が出てこないので、説明文や本文の情報を処理するのが非常に大変になります。
最初に読むときは一体何人出てくるかわからないので、どんな問題でも必ず人物の相関図を問題紙にメモしておきましょう。
メモでは、
- 「身分の上下関係」と「家族関係」が分かりやすくなるように書くこと
- 呼び方が複数ある人物は本名や位階名を並べて書くこと
を心がけておけば良いと思います。
例えば藤原実家の歌集の一部が出題されたときは、こんな感じです。
もちろん、共通テストなどの注釈がたくさん載っている問題では、注釈も動作主体特定のヒントとして、欠かせません。
古文常識を「感情」の理解に活用すること
古文常識が読解に役立つことは、言わずもがなですよね。
古文常識といっても幅広いのですが、受験では中古文と呼ばれる平安時代の文章が圧倒的に出題されるので、平安時代の常識はおさえておきましょう。
平安時代の常識で重要なのは、
- 「かみ・すけ・じょう・さかん」など官職・身分に関係する知識
- 方違え・出家などの仏教関係知識
- 通い婚や恋文、婚姻などの男女関係に関わる知識
- 和歌・音楽などの宮廷文化に関する知識
の4つに大きくわけられます。では、これらが読解においてどう役立つのでしょう。
それは多くは【登場人物の感情を把握するため】だと考えられます。
仏教関係の知識があれば、例えば「女性が仏道を志したときは失恋の悲しみがあまりにも深い」ことがわかります。切った髪が包まれて手紙と一緒に届くだけで、感情がわかるんですね。
また、通い婚の知識があれば、「男が3日連続で女のもとに夜に行かなかったら女は激怒する」ということがわかります。
和歌の知識があれば、「沢山掛詞が込められた技工的な和歌だから、天皇が感動して贈り物を与えた」というように、明らかには書かれていない情報を引き出せます。
古文の読解は謎解きです。謎解きの道具を増やすためと思って勉強したら身が入ると思います。是非知識を深めていってくださいね。
文学史の知識を「メタ的」読解に活用すること
古文常識に比べて、文学史知識を読解に活用する意識を持っている人は少ないと思います。
ですが、文学史問題が出題されなくとも、その知識がないと理解できない文章もあったり、知っていることでさらに理解が深まる文章も多いです。
一番わかりやすいのは「あらすじ」ですよね。
「紀貫之が土佐日記を書いた」と知っているだけで、文章の動作主体が分かったりしますし、
「夜の寝覚」が、「女主人公が心ならずに老関白に嫁いだが未亡人となってしまったり困難がありながらも姉の夫である男主人公との結ばれない関係を続ける」話だと分かっているだけで、人物相関図が描きやすいです。
そこまで沢山の情報はいりませんが、今はwikipediaやわかりやすいサイトがあるので、解いた問題の文章について調べて知識をストックしておくと良いです。
文学史知識は古文のメタ的な読解にも役立ちます。わかりにくいので例を見てみましょう。
早うの人は、我より高き所にまうでては、「こなたへ」となきかぎりは、上にものぼらで、下に立てることになむありける
(昔の人は、自分より身分の高い人のところに参って、「こちらへ」と言われない限り、家の上の方に登らず、下に立ったままである習慣があったと聞く)
以前のオンライン授業で、この地の文の文章で、「早う=昔の人」とはいつの誰のことかがわからないと質問を受けました。この文章は、『大鏡』からの出題だと問題の最後にかかれていました。(早稲田文学部)
文学史を勉強した人は、『大鏡』とは、「平安時代後期に書かれた摂関家の時代についての歴史物語」だという知識を学びます。
この知識を活用してみましょう。
歴史物語ということは、語り手は後の時代から昔の時代について書いているということなので、「早うの人」の時代とは、語り手にとって昔、つまり摂関家時代の人=登場人物の時代習慣であるということが分かるんですね。
このように、文学史における
- 随筆や日記、物語、説話などのジャンルの知識
- あらすじやテーマの知識
- 書き手についての年代や人物像の知識
が、読解においても非常に役にたつ、ということを記憶にとどめておいてください。
文学史の勉強法は下の記事で解説しています。
読解についての解説は以上です。次はいよいよ設問の解き方を解説していきます。
大学受験古文の解き方 設問編
古文の設問は、
- 全体のストーリー・動作主体と動作対象(「誰が」「誰に」)についての設問
- 文法知識についての設問
- 文の意味の解釈についての設問
の3つが重要です。1つ目については、前半で解説した読解を心がけていくことで解けるようになるので、残り2つについて考えていきましょう。
「文法問題」は「文脈」を駆使する
出題者とはアコギな商売(死語?)で、受験生がどうすれば釣り針にかかるかを研究しています。
古文の入試で受験生が引っかかる罠その①は、「見た目は文法問題なのに実は意味解釈の問題」です。
古文文法の勉強をしていくと、特に躓きやすいのが「助動詞の意味がいくつかあって覚えにくい」というハードルです。躓きやすいということは、入試問題におあつらえ向きだ、ということを意味します。
なので古文入試の文法問題では、一つの単語を見るだけでは意味が特定できない問題が重要です。
例を見てみましょう。
和歌「おのづからしばし忘るる夢もあれば驚かれてぞさらに悲しき」の中の「れ」の意味を答えよ。
早稲田大学文学部2018年度古文から一部改変
「れ」は助動詞「る」の連用形ですね。助動詞「る・らる」には、「受身・可能・尊敬・自発」の4つの意味があることは古文の基礎知識で覚える事項です。
これは当然、「驚かれ」の部分だけ見ても意味は特定できません。
判断根拠は、和歌冒頭の「おのづから」の部分を見る必要があり、「おのづから」は「自然と、いつの間にか」の意味があるので、和歌は「自然と忘れてしまう夢があるので、つい驚いてさらに悲しいものだ」と解釈できます。
よって、「れ」は「自発」の意味だと答えが導けました。
これはほんの一例ですが、文法問題では文脈全体の意味の解釈が求められるという認識が、大学受験古文での合否を分けると思ってください。
「意味問題」は「文法」を駆使する
古文の入試で受験生が引っかかる罠その②は、先程とは逆に「見た目は意味解釈の問題なのに実は文法の問題」です。こちらのほうが気づいていない受験生が多いので、この記事を見た方はラッキーですね(笑)
実例として、22年度共通テスト古文の第1問の、傍線部の解釈を選ぶ問題を見てみましょう。
(ア)「まどろわれ給はず」の解釈を選べ。
①酔いが回らずにいらっしゃる
②お眠りになることができない
③ぼんやりなさっている場合ではない
④お心が休まらずにいらっしゃる
⑤一息つこうともなさらない
実はこの問題は本文を読まなくても答えられます。
第一に、「れ給はず」の「ず」が打ち消しの意味なので、候補は②か③か④に絞れます。
そして、「れ給はず」の「れ」は「受身可能自発尊敬」ですが、打ち消しとセットで用いられると原則「可能」(できる)の意味でしか使わないので、答えは②「お眠りになることができない」です。
同じ問題の次の小問も見ます。
(イ)「ねびととのひたる」の解釈を選べ。
①将来が楽しみな
②成熟した
③着飾った
④場に調和した
⑤年相応の
傍線部の「たる」は「完了」の助動詞「たり」の連体形なので、「した」「った」としか訳せないので、候補は②③④に絞れて、「ねぶ」が成長する、「ととのふ」が不足なく備わるの意味なので、2つの要素をきちんと入れている②成熟したが正解です。
発展的に、本文の文脈をしっかり解釈する問題でも同じことです。また早稲田過去問を解きます。
傍線部「この人の名は今もたちなむ」の内容を選べ。
一部改変
イ:これからも寝覚の上の浮名は立ってしまうことだろう。
ロ:寝覚えの上と内大臣の関係は今も続いているのだろう。
ハ:寝覚えの上の美しさの評判はすぐにも広まるだろう。
本文の文脈を追わないと一見解答できなさそうですが、
「名」の訳として適切なのは「浮名」「評判」なので選択肢ロは候補から消え、「たちなむ」は「立つ」連用形「たち」・完了助動詞「ぬ」の未然形「な」・推量助動詞「む」の終止形なので、「立ってしまうことだろう」としか訳せません。
よって答えは選択肢イ。と、本文を読まずに品詞分解だけで答えが選べてしまいました。
当たり前の「品詞分解」を徹底しよう
まとめると、傍線部の意味の解釈を選ぶ問題では、傍線部の品詞分解を行って、それと一対一に対応する要素を含む選択肢を選ばないといけないということです。
逆にどんなに本文と意味が一致しているように思えても、品詞分解するとそのまま対応していない選択肢を選んではいけないということ。なお、動作主体などが補われている場合は除きます。
これ、「現代語訳せよ」という記述問題では、どんな受験生でも品詞分解をせっせと行うのに、マーク形式で「解釈せよ」という問題になると途端に品詞分解を放棄してしまう受験生がなぜか多いんですよね。
どんな問題でもまずは品詞分解して文法的に理解し、その後で絞れない場合は文脈を考える。
あるいは文脈から解釈していって、答えがあっているか文法的にもチェックする。
というように、文脈・文法の両面から問題を解いて、2重にチェックすることが古文の成績を上げることに直結します。
選択肢形式の問題は、メタ的に選択肢同士の比較をすれば、文構造の特徴が明確になります。
本文とそれぞれの選択肢の文との比較だけではなく、選択肢同士を意識してくださいね。
まとめ
本文読解では「主語=動作主体」の特定が、設問解答では「文脈・文法」の両面からアプローチすることが、それぞれ重要という話でした。
これ、どちらも本当に基本的で初歩的なのですが、できていないし教わっていない受験生が多いので、この記事を読んだ方は問題実戦で繰り返し練習して、習得していきましょう。
今回は解説できなかった大学ごとの個別の問題については、オンライン授業でそれぞれの志望校の過去問を扱うことでお教えしますので、成績を上げたい方は是非オンライン家庭教師「飛ぶ教室」にお越しください。無料体験実施中です。
現代文の解き方もチェックしてくださいね。
ではでは。
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